あい、この前の妄想の続きです。
翌日、頭のハッキリしてきた玉藻と、怪我が治ったいずなの話。
☆★☆さてさて翌日どうなったかな?★☆★
翌朝。
つまり今日だが……、頭の調子の戻った私は後悔にさいなまれていた。
全く、何故あんな所で意識を手放したのか……。
いや、理由はよく分かっている。
消耗しきった所に思い切りヒーリングを使ったのがきいたのだ。
それで奴の傷は見事なまでに早く、いや、人間にしてみれば異常なまでの勢いで回復した。
……傷の回復に関しては、幻で誤魔化すことに成功したが、院長からは嫌味たっぷりの注意をされ、看護師共は噂話に熱中しだす始末……さて、どうやって奴らの関心を逸らせたものか。
否、現状で最大の問題はこの『患者』自身か……。
「来んな!このド腐れ変態狐!!私はもう治ってるって言ってるでしょ!!?イヤーー助けて看護婦さぁん!!このき…っうぇ!!」
ドアを開けた瞬間こちらに飛んできた雑誌を粉砕し、『患者』が押そうとしたナースコールを弾き飛ばす。
そしてニッコリと医者の笑みを貼り付けて、やさしく、それはもう物凄くやさしく、馬鹿でも分かるように説明してやった。
「……院内に、動物は持ち込めません。それに、狐なんて最近は山のほうにでも行かないといませんよ?」
そして、忘れてはならないのが忠告だ。こちらも簡潔に、馬鹿にでも分かるように言ってやる。
「あまり人前で狐と呼ぶな。後、昨夜の事も吹聴するな。それから、まだ三日は怪我人のふりを続けろ」
「うぇああっ!」
「舌を持たれた状態で言っても、わからん」
「嫌だって言ってんだ性悪バカ狐!」
……この、馬鹿小娘が……。頭か心かの病気扱いにでもしてやりたい!
霊感は幻覚、私の正体に関しては妄想……絶鬼から受けた攻撃がトラウマになったことにしたら完璧ではないだろうか。
「あ、玉藻先生!こちらにいらしたんですか」
「!」
うまく精神科に誘導した後に、この馬鹿が飲む羽目になるであろう薬の副作用について考えながら、ひとまずどうやって黙らせるかを検討していると背後で扉がスライドし、看護師が現れた。
「あ♪っていうか~看護婦さん、この性悪…」
「!!も、もう大丈夫だからね。ここは病院なんだから、一人は寂しいかもしれないけど、少しも怖いことなんか起きない、安心していいんだよ!」
「は?ちょ…何言って…っていうかキモっ!」
「怪我は私がちゃんと治してあげる。だから、安心してお休み?ね?」
何とも間の悪い看護師だが、使わない手はない。早速私は背後の女に幻視の術をかけた。
今、この愚かな看護師には、馬鹿小娘が不安に怯え、泣きじゃくっているように見えているのだ。
「玉藻先生…っ、休憩時間まで患者さんを気にかけて……」
「あ、ああ、通りかかったら泣いている声が聞こえたもので……」
実際の所、馬鹿小娘はひたすらに『放せ』だの『変態』だの喚いていて、私はそれを強制的に寝かしつけている最中なのだが、彼女の目には儚げな怪我人と献身的な医者に見えているはず。
……適当に感動したらさっさと出て行ってくれれば、この馬鹿に催眠の術をかける方に集中できると言うのに、中々その場を動かない看護師と暫し会話する羽目になった。
私が同情からこの小娘を気にかけるのだと…そう誤解してまた噂話に興じるがいい。
病室を出て行く看護師の背に心でこう語りかけながら、私は、ようやく眠りに就いた馬鹿小娘から手を離して溜息をついた。
こうやって眠っていれば大人しいものだ。
この造形は嫌いじゃない。
暴れた形跡が目立たぬようベッド周辺を整え、寝息を立てる人形のようになった彼女の、人形とはちがう温い頬を軽く撫ぜて、私は仕事に戻った。
―――彼が、はたと、機を逸した頃に「何故、私は『不幸な医療事故』という最も簡単な口止め方法を思いつかなかったのだろう」と怪訝な顔をして、「まだ人魚の血の影響が出ていたのか?」と首を捻るのはもうしばらく先のこと。
☆★☆別の「病気?」で入院したらずっと一緒、でも殺しちゃったらもうさようなら、退院したら…また会える?★☆★
ふふふ、カプモノ的には、頬を撫でた際に無意識に優しく微笑んでたらうひひ♪って感じです。
でも、一人称だったら無意識の行動って書きにくい~!よって最後の最後だけ、三人称視点をいれてみました。
←昨日の状態(笑)