…浮かんだからには仕方ない。時期が過ぎても仕方がない…需要が無くても書くしかない!
いざ書かん玉藻×いずな!!!
多分お付き合いするには至らないけど両想いな感じ。
☆★☆七夕たまいず★☆★
ピンポーン。7月7日の夕暮れに、軽快にインターフォンがなります。
玉「開いている、入れ」
遊びに来ると約束していたので、ちゃんと待ってた玉藻。
暫くすると、分不相応なブランドの香水の臭いをさせて、いずなちゃん登場。
い「っていうかー、笹無い~?」
玉「笹?」
い「七夕だし」
玉「ああ、そうだな。だが、そんなものは無いぞ」
い「もーっありえなーい!用意しとけって感じ~っていうかリップ変えたみたいなー」
玉「……何が言いたい?」
い「リップ変えた!」
玉「……良かった…な」
首を傾げる玉藻はいずなの意図する所を分かっていません。
い「馬鹿狐っ!」
玉「何故そうなる!?笹が無い位でそんなに怒るな。全く…人間達がよくやる七夕ができれば良いんだろう?」
あまりに適当な対応に怒ったいずなの蹴りを防いだ玉藻は、完全に路線を間違えています。
玉「ふふ、化粧なんかしてもまだまだ子供だな」
ついには勝手に和みだした玉藻を睨むいずなの唇は尖り、瑞々しく蛍光灯の光を跳ね返しています。
い「む~っ…………ふんっ!」
いずなはむくれたままソファに勝手に陣取りました。何も手伝わない構えです。
玉「全く……。そんなにわがままじゃあ……モテないだろう?」
部屋で一番背の高い観葉植物の鉢を抱えて歩きながら、どういう訳か自分にとっては軽い部類のそれを持つのにギューッと力を込めて、玉藻は悪口を言います。
い「この前カレシ出来ましたぁー」
玉「え!!?」
玉藻は、気怠げにくちゃくちゃとガムを噛みながらのいずなの台詞に鉢を取り落としかけました。
い「……そこまで驚く!?モテなさそうで悪かったわね、嘘だよーだ!あ~あホワイトキックゥ~」
べーっ!と舌を出してソファの上であぐら……いずなのご機嫌は斜めどころか垂直です。
玉「(白い蹴り……?いや、聞いてこれ以上ひねくれられても困るかι)短冊の変わりにはならないか?」
表面に浮かんできそうな苦笑いを出来る限り隠しつつ、玉藻が渡すのは付箋。貼ってはがせるあれです。
い「ええ~っこれぇ?超ダサくない?」
玉「……仕事で使うんだ。悪いか」
い「…いつも使ってんの?便利?」
玉「まあまあだな」
い「ふーん……じゃあこれでいい。これも貸して!」
ペリっと付箋を剥すいずなは、口調こそつまらなそうにしているものの、その言葉を紡ぐ口許は笑っています。玉藻の万年筆をかっさらう頃には、すっかり機嫌がなおったようです。
玉「書きにくいんじゃないか?」
い「うるさい~。アンタに使えて私が使えない訳ないってのー!」
玉「…看護士!?」
初めての万年筆で、元から綺麗とは言えない文字より更にグレードの下がったものを書くいずなの手元を見ていた玉藻が、すっとんきょうな声をあげました。
確か彼女の夢は金持ちの霊能力者だったはず…。
い「っていうかぁー文句あんの?」
玉「……いや別に」
ブスッとして自分を睨むいずなから、無意識に目をそらしながら、自分もそこいらにあったボールペンで付箋に願い事を書き込みました。
い「ようやく医者を続けたい…って超ショボくない?」
玉「……うるさい。漸く(ようやく)じゃなくて暫く(しばらく)だバカ小娘」
い「べ~っだ!勉強なんかしなくたって東京だったら学校位一杯あるし~!!」
バカと言われた割に、いずなは満足そうな表情を浮かべています。
医者と看護士なら、一緒の職場で働ける……そんな図式を頭に浮かべつつ観葉植物の葉に並べて付箋を貼る二人は、どちらからともなく相手を見、それから視線を逸らしました。
い「ねーえ、っていうか、リップ変えたんだけど~っ」
いずなが来てから玉藻の鼻について仕方ない香水の臭いがキツくなりました。
いずなが肩にコツンと頭をぶつけられる位に近くに来ているからです。もしかすると体温も上がっているのかもしれません。
玉「!(まっ、またそれか!?)」
日も沈んだ時間に二人きり、そんな状況下でひっつかれて軽くどぎまぎ。しかし最初より甘ったるい声で言われても、何を意図しているのか分からない……もう玉藻先生別な方向性でもどぎまぎです。
玉「その……いつもよりテカテカしていて…凄い……な」
とりあえず褒めた方が良いのか?なんて思っての褒め?言葉は凄惨なクオリティでした。
い「~っ……バカーーッ!!!!」
玉「うわっ」
無論、いずなは怒りました。それはもう凄く怒りました。
怒って鞄からあれやこれや取り出して、投げ付けて、ついには回収もせずに帰ってしまいました。彼女にとっての教科書は武器以外の役には立たないのでしょうか。
玉「……はあ、結局怒らせてしまった」
ドタバタと足音を響かせながら去るセーラー服の後姿を見送って、前髪をかき上げた玉藻が肩を落とします。
リップの話題さえ出なければ、多分とても良い雰囲気だったのに……そう悔やみつついずなが投げ散らかした物を拾い集めると、新調したというリップクリームのパッケージが目に入りました。
玉「(まさか私の部屋はごみ捨て場程度だとでも言いたいのか?くっ……これさえ無ければ……)」
『キスしたくなる唇』
少々ショックを受けながら憎き空箱を拾いあげた玉藻の目に入った文字列。
玉「…………何だこれは」
ナンセンス。そう言いたげな目で、玉藻は成分を見た。
玉「…そんな効果がありそうには見えないが……」
呟いた瞬間リピート再生される台詞「リップ変えた」
玉「……」
いや、まさか。そんな……。
玉藻の手から空箱が落ちました。
慌てて拾いなおそうとして更に失敗。
『キスしたくなる唇』
とりあえず目の前から己が心を掻き乱す文字列を消し去りたかったのですが、それに失敗した玉藻の動揺は高まる一方でした。
玉「くっ…いい加減にしないかこの自意識過剰っ!」
自分しかいない部屋で抑え気味に叫ぶと、玉藻生は捨てる方を諦めて、寝室へ逃亡しました。ひとまず寝てしまおう。寝て忘れよう。……という算段だったのですが、眠くもないのにギュッと目を閉じたらそれこそ呪の様にいずなの姿がちらついて、眠れたもんじゃあなかったそうな。
☆★☆姿がちらついたいずなちゃん…どんないずなちゃんだったかは…妖狐のプライドにかけて秘密みたいです(笑)★☆★
…これってぶっちゃけ七夕は集まる口実以外の何でもないですね。
あのいずなが、投げる用途でしか出てこなかった教科書…あれをとりあえず持ち歩いてたって辺りが、もっと近くにいたいなって願望の表れだったらクェは大喜びで一日幸せでいられそうです。
でもまあ奴が教科書読むとは思えないが(笑)
……チュー顔描けにゃーい。
[2回]
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