ぬ~べ~の片思いでお相手玉ちゃんといきましょうか。ふふふ。
玉藻先生にBでLな趣味自体が無かったら楽しいです。
☆★☆玉ちゃん何か奢って~★☆★
場所は夜中のファミレス、お馴染みのライバル同士……ぬ~べ~と玉藻が向き合っておりました。
すました様子でコーヒーを飲む玉藻、そして大盛りの定食にがっつくぬ~べ~……いつもなら割合で言えば減るペースは同じくらいなのですが、今日は玉藻がコーヒーを半分程飲んだ時、ぬ~べ~の定食は九割方無くなっていました。
玉「好きですね、それ。よく頼むから覚えました」
ぬ「ん」
玉「……そんなに、空腹だったのですか?」
あまりの早さに、玉藻は倒すべきライバルと言うよりも、変な生き物を見るような目をぬ~べ~に向けてきます。
しかし、玉藻の読みははずれていました。
ぬ「ん……ああ。まあなっ」
しかし、ぬ~べ~は玉藻の言葉を肯定します。何だか妙に愛想が悪くって、様子が変ですね。しかもさっきからちっとも落ち着かない。
ライバルの様子が変なので、玉藻はコーヒーをもう一口飲みながら首を傾げました。
でも、様子が変なのは仕方が無いのです。
ぬ~べ~の目の前には、愛しのライバルが首を傾げて座っているのです。
そして、ぬ~べ~は一大決心を胸に秘めていたのです。
ぬ「(頑張るんだ俺……!このままじゃ俺の気持ちは一生届かない……!!)」
……実はぬ~べ~、今のところ玉藻にやったラブアタックの殆ど全てを「くだらない」「ナンセンス」「愚かな!」「アディオス」と、スルーされ続けて来たのです。そう、照れや恥じらいの欠片も見受けられない態度で。
その原因を、自分がそう言った意味での好意を持っていることが伝わっていないからだと考えたのでした。
玉藻が全くもってノーマルだって可能性は、無意識に脳味噌から排除しているようです。
実際、そうなんですけどね。
ぬ「(きっとフラれるだろう…だがここは男の見せ所だ…まずはスタート地点に立つ!!)」
そして玉藻が、コーヒーを飲み終える頃、ぬ~べ~はグワッと目を見開いて玉藻を見据えました。
ぬ「玉藻!」
玉「はい」
ぬ「……おっ……俺は……」
玉「デザートでも食べたいんですか?」
ぬ「違う!!」
呆れた、という顔をしていた玉藻は、ぬ~べ~の大声の否定に面食らって目を丸くしました。
玉「?」
ぬ「俺は毎朝、お前の作った味噌汁が食いたいっ!!」
時代錯誤も甚だしい…玉藻先生がパン派だったらどうするのか…というかいくら玉砕覚悟だからっていきなりプロポーズしてどうすると言うのでしょう。
それに対する玉藻の返事は「くだらない」か「ナンセンス」か「愚かな!」か…はたまた「アディオス」か……。
玉「はあ……別に、いいですよ」
ぬ「…………え!?……すまん。も、もう一回」
玉「だから、良いですよと言ったんです。そうですね……明日の朝、うちに来ますか?」
ぬ~べ~は、全く予想だにしない展開に、ついていけていません。
しかし、飛び付かない訳には行きません。
ぬ「き、来ます!来ます来ます絶対来ますっ!!」
脳内で天上の音楽を再生しながら、ぬ~べ~は変な日本語で返事をしました。
ああ、まさか両想いだったなんて!!
喜んだぬ~べ~は、よし、今日は俺の奢りだ!と主張して月末の自分の首を絞めました。
しかし彼の頭は式の日取りで一杯です。
玉「(驚いたな……鵺野先生がそんなに油揚げが好きだとは)」
はい、はしゃぐぬ~べ~を余所に、玉藻はこんなことを考えていました。
何故、味噌汁じゃなくて油揚げかって?
それは、翌朝のぬ~べ~に聞いてみましょう。
ぬ「玉ちゃ~ん、おはよう~vv」
玉「おはようございます。上がってください」
仄かに漂う味噌臭を感じ、昨日のは夢じゃなかったんだ!と、今なら飛べそうな勢いで喜んだぬ~べ~は、足取りも軽く玉藻の部屋に入りました。
玉「どうぞ」
頭の中が未だ式の日取りで一杯のぬ~べ~の目の前に、美味しそうな湯気を立てるご飯と、同じく湯気を上げるこんもり盛り上がった油揚げが置かれました。
ぬ「(……ん゛?)」
そして自分の分をよそった玉藻が着席します。
玉「助かりましたよ、鵺野先生」
ぬ「え?」
玉「ちょうど一人分の食事というものは、作るのに余計に手間がかかりますし……多めに作り置きすると、夜にはヒカヒカして不味かったんですよ」
愛しのライバルは、何やら上機嫌です。
玉「妙な感じではありますが……まあ、こういうのも良いでしょう。『敵に塩を送る』と言う言葉もありますからね」
上杉謙信にでもなったつもりでしょうか。愛しのライバルは前髪をかき上げて悦に入っています。
っていうか、ぬ~べ~、夫どころか敵呼ばわり、どうやらプロポーズ大作戦は失敗だったみたいです。
ぬ「…………」
ラップ巻けよ……。
マリッジブルーにすら浸る間もなくやってきた激しくブルーな現実に、いっそブルーフィルムな展開になってくれれば…と冗談を言う気力も無くして、ぬ~べ~は何処で見つけたのだと問いたくなるような青緑の器に目を音しました。
ぬ「(汁が、見当たらない)」
玉藻の味噌汁は、揚げ8汁2の割合で構成されています。汁なんか殆ど油揚げに吸われています。
ちなみに、作った本人は昨夜ぬ~べ~に向けた疑惑一杯のまなざしは何処へやら、当然のように味噌フレーバーの油揚げを食べています。
玉「ああ、そうだ。私は明日朝が早いのですが、先生はいつも通りでしょう?置いておきますから勝手に入って食べて下さい」
はい、合鍵……かしゃんと音を立てて机に置かれた鍵には可愛い狐のキーホルダー。
可愛い狐が言ってます。
『鵺野先生、貴方は警戒するに値しません。何故なら恋愛対象外ですから』
頼むよ意識してくれよ。そう心で呟くと、可愛い狐が答えます。
『ナンセンス』
ぬ「うん……ありがとう……」
もそもそと揚げを食らうぬ~べ~。
玉「意外ですね。朝は弱いんですか?」
パクパクと、自分の味噌汁を平らげつつある玉藻が、笑います。
よく、こんなに油揚げばっかり食えるよな……愛しのライバルの新たな一面大発見☆
ネオロマンスゲームならばスチル一枚ゲット級のときめきイベントも、今のぬ~べ~のハートに火はつけられません。
むしろ倦怠感は増すばかりです。
だって、多分明日も明後日も……きっとこうですよ?
玉「鵺野先生、美味しいでしょう?」
鵺「う、うん」
何て自信でしょう。
これではもう、嫌われたくない者は首を縦に振るしかありません。
ぬ~べ~が、毎朝一緒っていうことは逢う機会が増えて、口説くチャンスもそれに比例して増えるじゃないか!と前向きになるのには、まだちょっと時間がかかりそうです。
★☆★好きな物って沢山食べたくないですか?☆★☆
こんなすれ違いってか何をどうやったら実るのか!?って勢いの完全一方通行の恋愛って好きだったりします。
玉ちゃんが、たまに別のメニュー作ったら、美味しい美味しいよっ!!!とぬ~べ~が褒めたたえたりしたら、更に変な自信がつくという弊害はありますが、玉ちゃん照れる位はしてくれるかもしれませんね。
あれ、これって進展?
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