夏だし、こんなネタもありでしょう。
あ、玉藻とぬ~べ~のカプネタです。
折角お題借りたのにお題絵じゃないとかいう状態です。
でも、でも、時事ネタって時期が過ぎたら何か微妙じゃないですかっ!
☆★☆もしも言葉が通じたのなら★☆★
今日は童守町で花火大会。
ぬ~べ~は玉藻と見に行く約束をしていました。
玉「遅いですよ。もう始まるじゃないですか」
鵺「ああ~…すまん。途中で生徒にたかられてだな……」
一応は謝りながらも、自分用に買った烏賊焼きをもちゃもちゃと食べるぬ~べ~。
なんとも誠意が感じられない謝り方です。
鵺「…って…浴衣!?」
玉「何か問題でも?今は祭等で浴衣を着るものだと聞きましたが…」
鵺「い、いや…べ、別に…悪いことはないさ(もしかして、気合い入れてくれたんだろうか)」
何となく照れくさくなってぬ~べ~は、その後黙ってしまい、始まった花火を大人しく見上げていました。
鵺「……」
ぬ~べ~がちらっと玉藻の方を見ると、玉藻はじっと上を見たままです。
鵺「(むむむ、話しかけにくいな…何か、話題…)」
ぷ~ん。
どーん、どどーんという花火の音の合間に、嫌な音が聞こえてきました。
鵺「(げ、蚊だ!)」
ぷぷ~ん。
鵺「(ああ~もう何匹いるんだよ~っ!!)」
ペチぺチと叩いてみても、撃墜できる蚊の数はたかが知れています。
イライラしてきたぬ~べ~、ここが藪のそばなのがいけないのではないかと気付きます。
鵺「なあ、玉藻、どこか別のとこ…」
玉「……寄るな!」
ぬ~べ~が玉藻の肩を叩こうとしたその時です。
玉藻がそれはそれは不快そうに、言ったのでした。
鵺「!!!?」
どどーーん。
花火の音が遠のいた気がしました。
その位に、ぬ~べ~の心の中でその声は大音量で繰り返されていたのです。
『寄るな』
何で?
…俺が遅刻したから?
もしかして、烏賊臭い?
あいつの分買ってこなかったから拗ねた?
あああ、俺だけいつものやる気ない格好で来たのが駄目だったのか!?
花火見てるときに声かけたのがマズイのか!?
俺がごそごそ蚊と戦ってたのが気に障った!?
まさか…今朝歯磨きし忘れたのがバレて!?
ああああ何てこった、色々やりすぎて何がいけないのかわからないっ!!!!
でも、今、確かなのは玉藻が『寄るな』と言ったこと……。
鵺「ううう…」
よろよろと、ぬ~べ~は人ごみの中に消えていきました。
どどーん。
玉「人間というものは…この程度の物見たさに、よくもこんなに集まるものですね。コホン、…あの、はぐれてたら面倒ですし……」
女の子「え…v」
玉「え"?」
玉藻が前口上をつらつらと述べた後に手を伸ばした先には、頬を染めた女の子。
女の子「あ、あの…」
玉「……」
女の子「わ、私でよければ…v」
玉「……良くない」
あの男……遅刻した挙句、何処に行った!?
ささ~っ!と、女の子の前から逃走した玉藻。
それはそれは険しいお顔で人ごみの中を探します。
しかし人を隠すには人の中…ぬ~べ~の姿は中々見つかりません。
玉「ちっ、しかたない」
人の群から離れ、神社の林の中に身を潜めた玉藻は、目を伏せ、集中します。
この雑多な気配の塊の中から、ぬ~べ~の気配を探そうというのです。
玉「む?」
目的の気は、案外近くで見つかりました。玉藻が振り返るとガサッ!と音がして、林に潜む小動物にしては大き過ぎる影が林の奥に逃げ込もうとしています。
鵺「うわっ!」
玉「どういうつもりですか」
とっ捕まえられたぬ~べ~は素っ頓狂な悲鳴を上げました。
鵺「な、何だよ!お、お前が寄るなって言ったんだろうがよ!!」
玉「は?」
鵺「だっだから離れてやったんだろうが。ボランティア精神です~~~!べ~~だ!お前こそ来んなっ、あっちいけっ!」
玉「……」
鵺「ぶっ!何すんだよ!」
悪態をつきながらかさこそと四足走行で近くの藪に向けて走り出そうとしたぬ~べ~の腰を、玉藻先生はついつい蹴っ飛ばしました。そのせいで、ぬ~べ~は腐葉土に顔面着陸する羽目に……。
玉「貴方が急にいなくなって、嫌な目にあったので仕返しです」
鵺「え?…な、何言ってるんだよ。お前が…」
玉「貴方はいつ、蚊になったんですか」
鵺「……え?蚊?」
玉「はい、あそこ、蚊が山程いて疎ましかったでしょう?だから『寄るな』と」
鵺「蚊…っ蚊と喋る奴があるか~っ!?俺は…俺は、俺が何かしたんだと思って…」
ぬ~べ~の目元がひくついています。ちょっと涙腺が危ない感じです。
鵺「ふがーーーーーーーっ!!!!!!」
玉「痛っ!!!!」
ガッチーーーン!!!!
自分が涙目になっているのに気付いたのでしょう。
ぬ~べ~は、それを気取られぬように、全力をもって頭を玉藻のこめかみにぶち当てました。
玉「~~~~っ何をするのですか!?」
流石にくらっと来たらしく、転んだ玉藻、それにベロを出して、さらにはお尻ペンペンまでして見せるぬ~べ~。
玉「貴様……愚弄するか!?」
鵺「泣きかけてやんの~」
玉「!?な…誰が!?」
おそろいの涙目に持ち込んで、ぬ~べ~はご機嫌です。
酔っ払いA「おお~いいぞ兄ちゃん行け~っ!ひゃっひゃっひゃ」
酔っ払いB「金髪の兄ちゃんも頑張れよ~~」
そして始まるどつきあいに、酔っ払い大喜び。
誰も、二人が恋人同士だなんて思いません。もしかしたら、今この瞬間に関しては本人達も忘れているかも知れません。
警官「こらーーーっ!!」
玉「はっ…しまった」
鵺「げ!」
玉「……逃げますよ、鵺野先生」
鵺「お、おう!」
手に手をとって林の奥へ駆け込みます。
こういう道は玉藻の方がずっと慣れているので、何の口実もなしに手を引っ張っているのですが、恐らく記憶に残らないことでしょう。
鵺「はぁ…はぁ……お、お前、走るの、早すぎだろ……」
玉「ふん、ゆっくりしていたらいつまでも付いて来るじゃないですか」
警官の声も花火の音も遠くなった林の中で、並んで座った二人は息を吐きます。
ぬ~べ~のせいでできた打ち身の類が治ってきた玉藻は、さっき失敗した作戦をもう一度しようかと、ちらとぬ~べ~の様子を窺いました。
ぬ~べ~は何やらゴソゴソしています。
玉「?痛かったですか?」
鵺「いや…それより…、あの、虫さされの薬とか…持ってないよな?」
玉「ないですね」
鵺「お前、痒くないのか?」
玉「別に、刺されてませんから」
言われてみれば、ぬ~べ~の体には、さっきの喧嘩のせいでできた青痣以外に、赤い斑点がちょこちょこあります。
鵺「なっ…何でだ!?お前も、俺と一緒の所に立ってただろ!?」
玉「だから、寄るなと言ったって、言ったじゃないですか」
鵺「え!?」
玉「彼女らは大して切羽詰ってもいないようでしたから、遠慮してもらいました」
鵺「……なっ…俺はこんっなに刺されたのに!?」
玉「美味しそうに見えたんじゃないですか?」
鵺「ぬぐ…何だよそれ…。ああ、もう、今日は散々だよ」
けっ、とふて腐れるぬ~べ~、それを見て眉間に皺を寄せる玉藻。
玉「ふん、私だって、花火見て、いい雰囲気になったら……一緒に夜店を見ようとか、いっ色々考えていたのに…貴方がぶち壊しにしたんじゃないですか」
鵺「……色々って?」
微妙に、照れて誤魔化した部分に、ニヤニヤ顔のぬ~べ~が突っ込みます。
玉「いっ色々は色々です!!もう、今日は用事があるので帰ります!」
鵺「嘘つけ~用事なんか無いくせに」
玉「あるんです!あると言ったらあるんだ!!」
下駄に浴衣と、林の中を抜けるのには不向きな格好とは思えぬ速度でスタスタと帰ろうとする玉藻にぬ~べ~が追いすがります。
鵺「へっへっへ、じゃあ、お忙しい玉ちゃんの為に、俺が手伝ってあげよう♪」
玉「いりません!猫の手借りても鬼の手は借りません!!」
鵺「そう言うなって♪」
玉「ええいもう寄るな~~~っ!!」
鵺「何だよ、また蚊でもいたのか?」
人間の頭というものは不思議なもので、同じ言葉も、こんな時だと気にならない。
花火も終わった夜の林で、恋人達の追いかけっこが始まったのでした。
☆★☆手ぇ出そうとする時も、一生懸命計画立ててそうじゃないですか、玉ちゃん★☆★
そして、玉ちゃんの対ぬ~べ~の計画はコケる、と(笑)
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