もう九月なんで秋ですよね。
でも残暑きっついですよねー。
きっと七、八月も暑かったから、ゆきめちゃんイラついてるだろうな、と。
☆★☆・・・あ、ゆきめちゃんが酷いことになってるので可愛いゆきめちゃんが好きな人はお逃げください★☆★
今年は猛暑、東京は暑さが苦手な雪女には悲惨な環境だった。
人間さえも、熱にやられて命を落とす…ゆきめにとっては毎日が地獄のようだった。
ゆ「くっ…もう、耐えられないわ…」
自宅のクーラーをフル稼働させて、通勤ルートを歩くのも苦しいためバイトも減らして引きこもっていたゆきめは、虚ろな目で呟いた。
何に耐えられないか、と言うと、暑さではなく、暑さのせいで愛しのぬ~べ~に会えないことに、であり、そろそろ禁断症状が出そうなのだ。
ゆ「鵺野先生~……」
ゆきめは、ついに、夜中に家から這い出した。
一方、真夏のぬ~べ~は必死で餓えと戦っていた。
彼の部屋にも一応冷蔵庫なるものは存在するのだが、冷蔵庫、冷凍庫の中身というものは存在しないのである。
ぬ「うう…給食…新学期が待ち遠しい…」
そんな彼の頼みの綱は、童守病院の妖狐さま。
ぬ~べ~が玉藻に電話する回数は、学校がある時と比べると倍で済まなかった。
汗でどんどん体内の栄養分がなくなって行くこの夏、ぬ~べ~もまた、外出は少なかった。
そして、九月、ぬ~べ~はうきうきとしながら冷蔵庫を開けた。
新学期にやせ細ったぬ~べ~を見た秀一が、残飯をたくさんくれたのだ。
ぬ「あ~幸せだ~」
がぱっ。
冷蔵庫を開けて、食物の入ったタッパーを入れていくぬ~べ~はにっこにこです。
ぬ「お、そうだ」
電話の方へとスキップしていったぬ~べ~。
残されているのは、保存のききそうなものたち。これは冷凍しておくのだ♪
ぬ「あ、もしもし玉ちゃ~ん?秀一が残飯くれたんだけどさ、どうだ?お前も…」
玉『いりません』
ぬ「え、高級レストランのだぞ!」
玉『私に残飯あさりをする趣味はありません。アディオス、鵺野先生、私は食事以外の話題でかけてきてくださるのを待っていますよ』
ぬ「こ、こら!俺だって…あ~きりやがって…。もうくれって言っても絶対やらね。さて…冷凍保存~」
鼻歌交じりに冷凍庫を開けたぬ~べ~。
しかし彼の笑顔は瞬時に凍りついた。
なにやら、凄まじいブリザードが吹き出したからである。
???「きしゃーーーーーーっ!!!!!!もう九月なのに何だって言うのよ~~~っ!!!!!!」
ぬ「うぎゃーーーっ!おのれ妖怪!いったいいつの間に!?…え、ゆきめくん!?」
鬼の手を構えるぬ~べ~の目が丸くなった。
どうやらゆきめは、自宅を這い出した夜、ぬ~べ~の冷凍庫に進入を果たしたようである。ついでに、暑さで気が立っているようだ。
ゆ「はっ!鵺野先生!」
ぬ「ゆ、ゆ、ゆきめくん…何で?」
ぬ~べ~、大切な残飯タッパーを取り落としました。
ゆ「だって…暑くて、死んでしまうかと思って…それで、もし死んでしまうのなら鵺野先生のそばが良いって思って…」
ぬ「死ぬ!?」
ゆ「暑くて、鵺野先生に会えなくて……もう私つらくって…」
ぬ「そ、それで…ここの冷凍庫で」
…般若のような形相で?とまでは言わなかった。
流石のぬ~べ~も、その位のデリカシーはあるのだ。
ゆ「はい、涼しかったです。鵺野先生の声は聞こえるし…」
ぬ「言ってくれれば良かったのに…」
ゆ「だって…蓋を開けるのも嫌な位暑くって……というより、冷蔵庫って、中からじゃ開かないし…」
ぬ「(おいおい、人間だったら死んでるぞ)」
ゆ「そういえば…」
ぬ「ん?」
ゆきめが不意に俯いた。
彼女の顔を覗き込んだぬ~べ~の顔が固まった。
あれ?般若再び?
ゆ「先生、夏休みの間…狐さんのこと、よく誘ってましたね」
ぬ「え…あ、ああ、食事に…なあ」
ゆ「私に電話は、してくれました?」
ぬ「うぐっ…!!」
屋内で、吹雪が吹き荒れた。
ぬ「い、いやあ寒いな!も、もう秋だから…」
ゆ「残暑がキツくて、イライラします!!」
ぬ「は、ははは…温暖化かな…はは」
ゆ「…私がいるのにも気付いてくれないし、狐さんはデートに誘うし…過ちが起きなかったのは良いですけど部屋にも連れ込むし…っ」
ぬ「デート!?いや、違…」
ゆ「もう!許さないんだから~~~~~~~っ!!!!!!」
ぬ「違う!本当にあいつとは食事しただけで!」
ゆ「違いません!だって、あのひと鎌かけてました!」
ぬ「ええっ!?…あ、もしかして…」
ゆ「ほら!やっぱり心当たりがあるんだ!サイテーだ、おめさサイテーだー!」
徐々に訛りが顔を出し始め、ゆきめの怒りの程を示す。
ちなみに、ぬ~べ~の心当たりとは、玉藻が稲荷寿司を持ってきてくれた時のこと。
急に玉藻がゆきめのことを聞いてきたのだ。
玉『鵺野先生。雪女は何をしているのです?』
ぬ『え?ゆきめ?…バイトでもしてるんじゃないか?』
玉『人間に勤まる仕事とは思えませんが……』
ぬ『おいおい、あんまり人間なめるなよ~?』
そう、こんな会話をしたんだ。
そういえば、あの時玉藻は、不思議そうに、冷蔵庫の方を見ていた気がする。
多分、餓えと暑さを我慢するのに精一杯だった俺と違って、あいつは冷凍庫にゆきめがいることに気付いてたんだろう……言ってくれよ。
ぬ「ち、違うんだ!誤解だ!俺は別にやましい気持ちなんて…」
ゆ「誤解じゃないです!先生のバカ!浮気者っ!」
ぬ「ちがーーーーーう!!!!!!」
その熱帯夜、ぬ~べ~は、久々に寒いくらい涼しくすごし、凍傷になり腹を下したが、……諸事情で病院には行けなかったそうな。
☆★☆所かまわず妖怪丸出しで行動するゆきめちゃんが大好きです。時々ぬ~べ~に総攻撃仕掛ける所も大好きです★☆★
やつあたりなんかしたくなるのも、ぬ~べ~に甘えたい気持ちがあるからと解釈すればきっとこれもそれなりに可愛い気が……してきませぬか?(え?無理?)
……ぬ~べ~って結構妖怪の善悪を外見で判断しますよね(笑)
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