玉藻とぬ~べ~カプで、ラブラブな感じで。
小学生どもの夏休みは終わってしまいましたが…ちょっと遅れた夏休みネタで!
☆★☆たくさんは嬉しい?★☆★
お盆休みの夕暮れの、人っ子一人いない教室で、熱心に黒板に向かう妖怪を、ぬ~べ~は発見しました。
それを見たぬ~べ~は鬼の手を出して……ではなく満面の笑みで歩み寄りました。
鵺「玉藻、何してるんだ?」
玉「見つかってしまいましたね」
鵺「わざわざ探させないで、うちに来たら良いだろ?」
柔らかに微笑んで振り返った玉藻の肩に顎を乗せ、腰に軽く腕を回しながら文句を言うぬ~べ~の目は優しいことこの上ありません。
気を隠すどころか、いつもより少し目立つように放ってから、適当に人気の無い場所に潜む……このバレバレの『隠れんぼ』を、どうやら玉藻が気に入っているらしいと分かっているのです。
鵺「……」
玉「どうかしましたか?」
ぬ~べ~の目は黒板に釘付けです。
何故かってそりゃ、一面に、びっしりと、授業に使うには少々小さい字で自分の名前が書いてあれば誰でも気になります。
鵺「こ、これは……ι」
玉「あ、すぐ消しますよ」
ぬ~べ~がこころなしか引いているのに気付いたのか、玉藻はさっさっと黒板の文字を消していきます。
玉「鵺野先生、私は今日、貴方を喜ばせてあげようと思って来たんです」
鵺「え…?」
逢いに来てくれた時点で嬉しいんだが……という甘過ぎる台詞は流石に飲み込んで、目を丸くしたぬ~べ~は、得意げに笑う玉藻を見ました。
玉「いきますよ!」
ばふっ!
鵺「!?ぐぇっごほっなっ……玉藻!?」
玉藻は先程まで黒板を消すのに使っていた黒板消しを二つ、打ち合わせました。
黒板を埋め尽くす程の文字を全て消した後です、当然白い粉が舞います。
玉「ふっ、人間は欲深い生き物……鵺野先生、貴方も人間だ」
鵺「そ、それと…ゲホッ、これがどう繋がるんだよ」
ホント、説教する為だけに急にチョークの粉を浴びせるなんてあんまりです。
玉「だから、好きな物が沢山あったら……」
にっこりと笑みを浮べた玉藻の目が怪しく光ります。
玉「「「「「嬉しいでしょう?」」」」」
鵺「げぇっ!!」
煙が消えた瞬間、玉藻の声が複数重なりました。
玉藻が広をさらったあの日の悪夢、再来です。
しかしあの日と違って、全ての玉藻が嬉しそうにニコニコと笑っています。
ぬ~べ~は、こいつ結構短絡的だよな…と思いつつも、苦笑いしたまま動けません。
何故なら教室中にわらわらと溢れた玉藻が口々に「嬉しいですか?」だの「鵺野先生大好きです」だの言うだけでないのです。
抱き付く玉藻、腕を引く玉藻、頬を撫でる玉藻、髪の上からキスする玉藻……玉藻玉藻玉藻……それらは幻であるが、ぬ~べ~をフリーズさせるには十分でした。
鵺「(どうしよう……凄く嬉しくない)」
でも、多分自分は何かしらリアクションした方が良いのです。
そう多分、抱き締め返したりしたら凄く喜ぶんです。
でも、でも、多分リアクション相手を間違えたら大変なことになるんです!
鵺「(落ち着け…集中するんだ……。くっそ~…腕を上げてやがるっ)」
我が身に触れる感触も、気配の誤魔化し方も、初めての時とは大違いです。全てが本物の様であり、同時に全てが幻の様…。
鵺「(多分本物は俺に触ってるうちのどれかだ…だが…うぅぅ分からんっ!せめて霊水晶が使えたらっ)」
攻撃と違って、外すわけにはいかないぬ~べ~は、ハーレム状態で悩みに悩みます。
一方、ぬ~べ~が立ち尽くしたまま何も言わないので、玉藻は一斉に小首を傾げました。
玉「鵺野先生?」
ぬ~べ~は唸っています。
複数の玉藻の中の一体がぬ~べ~に近付き、顔を覗きこみました。
玉「……もっと、過激な方が良かったですか?」
鵺「何っ!?」
過激って何だ!?!?
ぬ~べ~の頭が沸騰してきました。
過激って…予想がつかない事はないがここでか!?
玉「仕方ないですねえ……」
慌てているぬ~べ~を尻目に、あちこちで玉藻がネクタイを緩めたり白衣をパサリと落としたりしています。
このままでは非常に危険です。
鵺「くっ……」
窮地に追い込まれたぬ~べ~は意を決して、先程話しかけてきた玉藻に抱き付きました。
鵺「ぬぉぉおっ!俺はお前が一人いればそれで十分だぁぁっ!!」
スカッ。
鵺「(………あ)」
ぬ~べ~は、はずれを掴みました。
「残念、後ろだ!」
いつかの玉藻の言葉が、ぬ~べ~の耳の奥で蘇りました。
「よーし、ここでシャッフルだ!」
とか言い出したらどうしよう……そんなことを思いながら、ぬ~べ~は消えた玉藻を突き抜けて床に倒れました。
玉藻軍団が消え、靴音が近付いて来ます。
鵺「(……怒ってるんだろうなぁ…)」
玉「ふっ、何を本物がわからなくなるまで欲情してるんですか。鵺野先生」
鵺「(いや違うっ!!)」
バババッと反射的に顔を上げたぬ~べ~の頭を、「若いですね~」と玉藻が撫でています。押し倒そうとしたと勘違いしたようです。
鵺「ち、ちがっ…!」
玉「まさかそんなに私が魅力的だったとは!ハハハハハ…」
玉藻、大喜び。人気のない教室には高笑いが木霊します。
鵺「だーっ!違うって言ってるだろ!!」
起き上がって肩を掴めば逆効果。ニヒルな笑みが返って来ます。
玉「今更、何を照れているんです?……でも、ここじゃ駄目ですよ」
だーめっと手首を掴んで下に下ろさせられたぬ~べ~は釈然としません。
鵺「む…じゃあ、どこなら良いんだよ」
人をドズケベ扱いする割りにノリ気な様子の玉藻を、ぬ~べ~は口を尖らせて見ました。
玉「そうですね…ここからなら鵺野先生の部屋が近いんじゃないですか?」
鵺「……じゃあさ、ヨクジョーしてる俺の為にお前今日受けやってくれよな」
玉「何でそうなるんです?」
鵺「何でって今言っただろがっ!」
玉「じゃあ、ジャンケンしましょう」
はい、最初はぐーと、答えは聞いてない状態の玉藻、しかしこいつが確率に支配されるような勝負を選ぶだろうか?と疑問が浮かんだぬ~べ~はがしっと玉藻のぐーにした手を掴みます。
鵺「幻視の術は無しだからな!」
玉「(ちっ…)誰がそんな汚いマネをするというんです。ほら、出さなきゃ自動的に負けですよ!」
鵺「よし!年賀状の切手シートも当てたことのない俺だが…今回は気合の違いを見せ付けてやるぜ!」
玉「ふふ…」
玉・鵺「さいっしょはグーっ!」
こんなこともあろうかと、貴方が今日ジャンケンで出しやすい手、占っておきましたv
ニコニコと妖しい笑みの玉藻、鼻息の荒いぬ~べ~…勝敗やいかに?
☆★☆勝敗はお好みで~(委ねるのかよ)★☆★
え?占って来たほうが有利?せこい?
そんな冷たい目を向けないでくださいよ、ぬ玉派の方。
ぬ~べ~って「愛」の力で無限大な人間じゃないですか。
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